夢から覚めたら
第3回

誰かが語った空


「あれは昨日のことだったわ・・・・・。あなたが図書館で見つけたと言ってあの本を持ってきたのは。

 いきなり魔術の実験をするとか言いだしたから何をするのかと思ったら、夢の世界、つまりこの・・・こんな世界に行きたい

 とか言って・・・・・・動機を聞いたのは間違いだったかもね。あんなくだらない理由なんて・・・・・・」

「くだらない?」

彼女の口調に驚きと恐れを感じたが、思わず聞き返してしまった。

「そうよ!くだらない理由だわ。自分がかっこよくなった夢を見たからだなんて。

 そんな夢のために巻き込まれたなんて・・・・・・くだらないし、情けないわよ!」

「そんな理由だったのか・・・・・・」

確かにくだらないし、情けなかった。今ではなんでそんな気になったのかもわからない。

「ごめん。僕が間違えていたよ。なんでそんな気になったのかもわからないけど・・・・確かに僕が間違えていたよ。」

素直に謝ると、彼女も少し落ち着いたようで、

「まあいいわ。すんでしまった事だもの。」

と言ってくれた。それにしても・・・・・・

「これからどうするの? 」

・・・・・・同じ事を考えていたようだ。

「この世界の解除方法は・・・・・・知らないよね?」

一応聞いてみたが、

「知らないわよ。知ってたら解除してるわ。」

とのことだった。・・・・・・そりゃそうか。

「僕が持ってきたっていう本は?」

「わからないの。どこかに行ってしまったみたいで。ここに来る前はあなたが持ってたんだけど・・・・・」

これはどうしようもないかもしれないな・・・・・・。そんな事がふと頭によぎった。

「それよりどうするの?この世界が解除されないと・・・・・・あたし・・・・・・」

「そうだね。僕も死ぬのはごめんだし、君を人殺しにするのはもっといやだ。」

そう。僕が見た夢は、彼女に殺される夢だった。こんな世界じゃなかったら、笑って済ませられる夢なのに・・・・・・

「ねぇ、ここから出ないっていうのは?夢だとここじゃないところだったんでしょ?」

「・・・・・・そうだね。とりあえずはそうするしかないね。でも食事とかトイレは?」

当然の疑問だと思う。

「そういえば忘れてたわ。詳しい時間は分からないけど、あたしは4、5時間は起きてると思うんだけど、

 お腹も減らないし、トイレに行きたいとも思わなかったわ。」

おかしな話だった。そもそも・・・・

「時間が分からないって、その時計は?」

彼女は腕時計をしているのに・・・・・・

「止まってるわ。この世界に来てから、ずっと。」

「え?」

あわてて自分の時計を確認してみる。・・・・・・・止まってる。

「僕のもだ。止まってるよ。時間は8時32分。」

「同じ時間ね。つまりこの世界に来た時間ってわけだ。」

そう言われたとき、ふと思い付いた。

「そうか。わかったぞ。」

「なにが?」

不思議そうに彼女が聞いてきた。

「わかったんだよ。この世界の謎が。ここは・・・・・・」

つづく

誰かが語った空