夢から覚めたら
第2回
誰かが語った空
「・・・・・・とまぁ、こんな感じだったかな。」
一通り話して、僕は一息ついた。
「僕の話はこれくらいにして、この状況を説明してくれないかな?」
そう言って彼女の方を見ると、彼女は真っ青になって下を向いていた。
「どうしたの?今の話にそんなに恐いところがあったとは思えないけど・・・・」
そう言う僕に彼女はやっとのことでという感じで顔を向けた。
「とんでもない夢を見たのね。」
やっとのことで絞り出したような声だった。
「どうしたんだよ。たかが夢の話じゃないか。なんでそんなに怖がっているんだよ。」
訳が分からなかったためか、ちょっといらついた声を出してしまっが、彼女はそれにも反応しなかった。
いつもなら、そんな声で話し掛けようなら、喧嘩は免れないのに・・・・・・・。
「どうしたんだよ、ほんとに。説明してくれないか?今の状況も、その反応のわけも。」
今度はやさしく問い掛けてみた。
「そうね。あなたは状況が分かってなかったんだものね。」
何とか気を取り直した感じで答えてくれた。
「でも、覚悟してね。普通の状況じゃないから。」
覗き込むように話し掛けてくる彼女に、軽くうなずくことで同意を示す。
「先に言っておくけど、べつにあたしの気が狂ってるわけじゃないから・・・・・・・
狂っている方が楽かもしれないけどね。あたしは正気だから。」
・・・ちょっと覚悟がいりそうだな。
そう思いつつ目で先を促す。
「・・・・ここはね、あなたの夢の世界なの。」
「・・・え?」
自分でも間抜けな声だと思った。一瞬理解ができなかった。
「だから、ここはあなたの夢の世界なの。」
「・・・・まさか。」
理解はできたと思うが、信じられない。
「ほんとよ。あたしだってうそだと思いたいんだけど・・・・・」
彼女も信じられないような声だ。
「じゃあ、ここでは僕の思ったことが現実になるのかい?よくものの話に出てくるみたいに?」
信じられないが、とりあえず聞いてみる。返ってきた答えは・・・・・・もっと信じられなかった。
「ちがうわ。ここは・・・・ここはあなたが見た夢が現実になる世界・・・・・・・。そう設定されているもの。」
「設定?誰が?どうやって?」
「あなたが、よ。どうやってやったかは詳しいことはわからないけど・・・・・・魔法の儀式だって言ってたわよ、あなたは。」
「僕が?」
僕がなんでそんな事をしなければならなかったんだろう。しかもそんな聞いただけでも不安定そうな世界に・・・・
「そうよ。怪しげな本を持ってきて自慢げに言ってたじゃない。」
「・・・なんでそんな事をしたかわかる?」
恐る恐る聞いてみる。
「それを説明させるの?あたしに?」
なぜか怒ったようだが、他に方法がない。
「たのむよ。思い出せないんだ。」
そう言うと、まだ怒っているようだったが、話しはじめてくれた。
「そうね。あなたは記憶が飛んでるんですものね。しょうがないから教えてあげる。
あなたがなんでこんなことをしたのかをね。」
・・・・・・やっぱり怒っている。それもかなりの勢いで・・・・・・
「あれは昨日のことだったわ・・・・・・・」
つづく
誰かが語った空