夢から覚めたら
第1回

誰かが語った空


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」

僕は声を上げて跳ね起きた。

「ゆ・・・夢か・・・・・・・」

動悸が早くなっているのがわかる。

「目が覚めたみたいね。どうしたの?叫んだりして。」

ビクッとして声の方を振り向く。心臓が止まるかと思った。

「な・・・なによ、急に振り向いたりして・・・。びっくりするじゃない。」

そこには驚いている女の子の顔があった。見慣れた顔だった。少しほっとして、

「ああ、ごめん。誰かがいるなんて思わなかったから・・・・・・」

そう言ってから気がついた。

「なんで君がここにいる?ここは僕の部屋だろう?」

そう言う僕に、彼女は心配そうな顔をした。

「違うわよ。大丈夫?記憶が飛んでるんじゃない?よく周りを見てごらんなさい。」

そう言われてあたりを見回すと、確かに僕の部屋じゃなかった。見覚えがない。

ベッドに寝ていたのでてっきり僕の部屋だと思ったんだけど、見覚えのない部屋だった。

「こ・・・・ここは?」

「ほんとに大丈夫?あたしの名前、わかる?自分の名前は?」

逆にそう問い返されてしまった。

「大丈夫だよ。意識もしっかりしてる。ただ・・・・・」

「ただ?」

「この場所がどこかと、どうしてここに居るのかだけが思い出せない。」

そう言うと彼女は少しほっとした表情を見せた。

「よかった。」

「何がよかったんだ?こっちは状況が分からないっていうのに・・・」

ちょっとムッとして言うと彼女は微笑んだ。

「だって・・・記憶喪失になったのかと思ったんだもん。あたしのこと忘れちゃったのかと思ったわ。」

その答えに思わず苦笑がこぼれた。

「そんなわけないじゃないか。僕が君を忘れるなんて。」

そう言うと彼女は表情を曇らせた。

「どうしたんだい?」

「そっちこそどうしたの?そんな事言うなんて・・・・・

 今までそんなセリフ言ったこともなかったのに・・・・・

 ほんとに大丈夫なの?」

そう言う彼女に向かってうなずいて見せる。

「そう。それならいいけど・・・・」

「大丈夫だってば。それより・・・・・・」

一番気になっていることを聞いてみる。

「ここは?どうして僕たちはここにいるんだい?」

「そうね。思い出せないのなら教えてあげてもいいけど・・・・・その前にあたしも一つ聞きたいことがあるな。」

彼女はいたずらっぽく聞き返してきた。

「なんだい?」

「さっきは何の夢を見てたの?」

意外な質問だった。何も今そんな事を聞かなくてもいいと思う。こっちは状況が分からないのに・・・・・

「ね、いいでしょ?こっちの話は長くかかるし・・・・・それに・・・」

「それに?」

「あなたのこと、何でも知りたいから。」

照れたような笑顔ではにかんでいる。いつも見ているけど、かわいいと思う。

「しょうがないなぁ。こっちもちゃんと話せば長くなると思うんだけど、簡単にね。」

「やったぁ!」

飛び上がらんばかりに喜ばれてしまった。なんでそこまで喜べるんだろう、と思う。

その思いを顔に出さないように気をつけつつ、僕は話しはじめた。

「そうだなぁ・・・・・・。あれがどこかはわからないんだけど・・・・・・・」

つづく

誰かが語った空