あの懐かしき空の下で
第4話〜忍び寄る崩壊〜
誰かが語った空
その後、クィルケさん−つまり妹−の方から、兄−つまり僕−の事について聞いてくることはなかった。
ただ今までと同じように、チャットで何気ない会話を繰り返しているだけだった。
僕のほうは、真実がばれない様に、あまり積極的には彼女には話し掛けることは無かったが、
向こうから話し掛けられた時には無視するわけには行かず(雰囲気壊すし)、話はしていた。
彼女としては、僕が同郷出身だとわかって以来、なんとなく親近感でも沸いたのか、割と、僕に話し掛ける事が多かった。
・・・他のメンツは彼女から話し掛けなくても話し掛けはじめるというのもあるんだけどね。
僕としても、最初のうちはばれるかどうかドキドキしながら会話をしていたが、
そんな会話も出ないので、安心して普通に会話をするようになっていた。
そんなこんなで、何事も無い日々が過ぎていった。
ある日の事。
いつもよりちょっと早く仕事から帰った僕は、PCを立ち上げ、いくつかのサイトをチェックした後、いつものチャットに入った。
その日は、珍しく僕が一番乗りだったらしく、他に誰もいなかった。
(しょうがない。誰かが来るまで他のことでもしようかな)
そんなことを考えた矢先、「姉さん」が入ってきた。
「こんばんわ、姉さん。誰もいなくてさびしかったよ〜(/_;)」
などと、挨拶を飛ばすと、
「あら、珍しいのね、二人きりなんて。ちょうどいいから襲っちゃおうかしら(ぇ」
なんて言ってきた。・・・あの人らしい。
「カツアゲですか(ガタガタブルブル」
「んなわけあるか〜(爆)」
などと、かな〜り間抜けな会話を繰り広げつつ、いつもどおりマッタリしていた。
でも、その日は珍しく、なかなか他の人が来なかった。
「なかなか他の人が来ないですねぇ・・・珍しく」
と振ってみると、
「そうだね〜。まぁ、たまにはこんな事もあるでしょ。それとも、私だけじゃ不満?(ギロ」
とのお言葉。いつもどおり、ちょっとふざけて、
「い・・・いやだなぁ。そ・・・そんな訳ないじゃないですか・・・(ビクビク)」
と返してみると、
「な〜によ。どうせ、若い子の方がいいとか思ってるんでしょ〜 クィルケさんとか」
と返って来た。
妹のHNが出てきたことで、僕はなぜか焦ってしまい、
「何でそこでクィルケさんが出てくるのさ」
と反応してしまった。
その反応が意外だったのか、
「なんでそんなにムキになるのよ。ただの冗談じゃない。」
と返って来た。
そう。後から冷静に考えると、姉さんにとっては何の意図も無いただの冗談だったはずである。
軽く流してしまえばそれで済むはずだったのだ。なのに、そのときの僕は、
「ムキになってなんかいないよ。だけど、何でクィルケさんが出てくるのさ」
と返していた。後になって考えると、かなりパニクっていたんだろう。
そんな僕の態度を、何か誤解したのか、姉さんは
「はは〜ん。S君はそんなにクィルケさんが好きなのか〜」
なんて返してきたもんだから、否定するつもりで
「何でそうなるのさ。クィルケさんのことなんてなんとも思ってないってば。
そもそも、うちの妹と大して年が違わないんですよ?なんでそんな子を・・・」
と返していた。
その次の瞬間・・・
チャットに入ってきたのは、その当のクィルケさんだった・・・
To be continued.
誰かが語った空